孤独のオリエンタルカレー

■ 「オリエンタルカレー」なるメニューがあって、一体これは何だどんな味だと家人と議論になった。
インドカレーはインドだろう。タイカレーはタイだ。じゃあオリエタルカレーはどこだ。オリエンタルなんて国はない。

"オリエンタルな顔立ち"、"オリエンタルな色調"などと言われてなんとなくイメージはわくものの具体的に「コレ」といった確証がない。なんとなく西洋に東洋が混ざってる感じの?トルコとか?イランとか中東の?ペルシャ絨毯な感じ?あるいはインド近辺?

例えばオリエンタルな顔立ちと評されるキアヌ・リーヴスの血筋はハワイ・イングランド・ポルトガル・中国で、アッテンボローの「ガンジー」で主演をつとめたイギリス人俳優ベン・キングズレーの母親はロシア系、父親はインド系だ。

"CAN"をはじめとしたジャーマン・ロックの曲調にオリエンタルな要素が多いのは、当時ドイツで爆発的に増えていたトルコ移民がもたらしたメロディーやリズムによるものだという人もいる。

が、
結局オリエンタルカレーがどんなもんなのかは分からない。
仮にトルコから中近東・中東・インドまでを含めた地域としても、範囲が広すぎる。一つのカレーが出てこない。
大体インドカレーとの差別化はどうするのだ。

しかしここまで話してパッと読めた。読み切った。

サイードの「オリエンタリズム」、あるいは渡辺京二の「逝きし世の面影」によれば「オリエンタル」なる言葉が意味するのは”西ヨーロッパ人から見た東洋”、もう少し言うなら”西ヨーロッパ人が「好奇の目」で見た東洋”ということだ。平たくいえば"西洋人が憧れる東洋"ってことだ。つまり「オリエンタル」という言葉の主語は西洋、西ヨーロッパなのだ。

つまりオリエンタルカレーとは、ヨーロッパカレー、すなわち欧風カレーに違いない。
多めのタマネギと果物を煮込んだ甘めの欧風カレーに、憧れの東洋的スパイスを加えて辛めに仕上げたもの、これこそオリエンタルカレーに違いない。
「違いない!」ってことで目の前のオリエンタルカレーを食べてみた。見事に辛めの欧風カレー。勝った。なんだろうこの勝ちきった感じ。ざまあねえなカレー屋って感じ。うまい。



しかし、
ここで厄介なのはヨーロッパにいわゆる欧風カレーは存在しないという事実。
つまりこれは日本人のイメージの中にあるヨーロッパ風カレーなのである。ということは「日本人が想像したヨーロッパ人が想像した東洋風カレー」がオリエンタルカレーということになる。つまりこれは想像のネスト構造、入れ子構造カレーなのである。ネスティングカレーなのである。

現実に存在するのは日本人だけ。
オリエンタルカレー。それはどこまでも孤独なカレーなのだった。











[ 2015/06/13 15:46 ] 雑記 | TB(-) | CM(-)